信濃の疏水
松本地域
北アルプスの水がレタスを育てる 岩垂原(いわだれはら)
長野県のほぼ中央に位置する空の玄関口「信州まつもと空港」から3㎞ほど南に向かうと、塩尻市、松本市、朝日村の2市1村にまたがる一面の畑作地帯が広がります。
ここは「岩垂原地区」として、県営畑地帯総合土地改良事業でレタスやリンゴへの散水施設や農道の整備が行われました。440haに及ぶ受益地では、扇状地形と準高冷地の気候を活かしたレタスが生産され、全国有数の産地となっています。また、地区内の幹線農道には「アルプスグリーンロード」「愛ビタミンロード」と、農産物の産地を連想させる名前が付けられています。
この地域に水を運ぶ中信平右岸上段幹線水路は、国営事業などにより造成されたもので、北アルプスに源を発する一級河川梓川に建設された稲核ダムから取水され、約20㎞に及ぶ水路により受益地に水が運ばれています。上高地の清涼な水がダムにより安定的に確保され農地に散水されている風景からは、かつては干ばつの常襲地帯であった事を思い起こす人も少なくなってきています。
この地域では、全ての畑において自然圧による散水が行われています。加圧散水の場合は、圧力の変動が大きく散水範囲が不安定となり、管理が難しいようです。農産物の品質向上を考え、農地の集積や、新規就農者の確保を進めるこの地域では、持続可能な産地形成が図られており、今後もレタス産地の発展が期待されています。
2014年6月掲載
◦施設管理者 長野県中信平右岸土地改良区
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