信濃の疏水
大北地域
現代のトムソーヤ達が集まる“わっぱらんど” 上原用水(わっぱらようすい)
県道扇沢大町線(アルペンライン)を使って、黒部立山アルペンルートの玄関口である扇沢駅へ向かう途中、大町温泉郷を少し過ぎた道路脇で、約300mの幅広な水路を見つけることが出来ます。そこは「上原用水」と呼ばれる農業用水路のうち、地元の人が「ぬるめ」と呼ぶ温水路です。
「上原用水」は、篭川より取水する大町新堰から分水しており、戦後に食料増産を目的として開墾された上原地区に広がる約50haの水田を潤すため、昭和30年代に造られました。
「ぬるめ」は、北アルプスの雪解け水を集めて流れる篭川の水がとても冷たいことから、少しでも水稲の生育に適した水温へ上昇させるために造られました。冷たい水を浅く広く蛇行させながらゆっくりと流し、陽射しを多く当てることで、水が温まる様に工夫されています。
県内でも珍しい「ぬるめ」と周囲の自然環境を活かし、訪れる人が親しめる空間にしようと、地域住民を主体とした「わっぱらんどの会」が平成12年度に発足し、※1グラウンドワークという手法で「ぬるめ」周辺の環境整備を進めています。また、※2県営事業により、遊歩道やあずまやなどが設置され、親水公園としての機能が付加されました。
こうして整備された「ぬるめ」一帯は「わっぱらんど」と名付けられ、夏祭りや自然観察会などのイベントが行われる交流活動の場として、水遊びや林の中を探検する子供達の遊び場として、多くの人々を引きつける魅力的な場所となっています。
2012年5月掲載
※1 地域環境の改善、整備を市民・行政・企業の三者が協力して行う運動で、イギリスが発祥と言われています。
※2 里地棚田保全整備事業(平成13~16年度)
◦施設管理者 大町市土地改良区
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