信濃の疏水
北信地域
住民の熱意で17年 野々海池(ののみいけ)
長野県の最北部に位置する栄村に貯水面積23haという広大なため池「野々海池」があります。信越国境関田山脈の山あい、標高1、020mの高地に造られた「野々海池」の歴史は、住民の米作への熱い思いの賜物でした。
昭和10年ごろの栄村水内地区では、村内で生産される米では自給できない状態でした。また、東京電力信濃川発電所の建設により15haの農地が失われたのに加え、戦中の食料難をむかえ、新たな水田を求める住民の思いは大変大きなものでした。
住民の思いが届き、戦後の昭和24年、水内開拓事業として、野々海池の築堤工事のほか、水路・道路の工事に住民自らが加わり開拓事業に着手しました。しかし、山を貫く3箇所のトンネル(総延長668m)のほか、砂利や砂などの工事資材を、千曲川から標高差が800mある野々海池まで人肩や牛馬により運搬することから、工事は難儀を極めました。実に17年の歳月をかけ、昭和40年に全体の整備が完了しました。
こうした住民の努力により、新たに90haの開田を果たし、水内地区で出荷される米は、昭和40年には実に整備前の7倍の280t余りにのぼりました。
野々海池のほとりには、開拓事業の中心的な役割を担った一人でありながら、工事中に命を落とした高橋統祥さんの功績を称えた頌徳碑が建てられています。
ブナの原生林に囲まれ風光明媚なこの池周辺には、キャンプ場があるほかミズバショウやモウセンゴケの群生地もあり、雪どけ水を湛え、周りの山々を美しく映す広大な水面は見る人の心を惹きつけます。
2009年12月掲載
◦管理者 野々海水利組合
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