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信濃の疏水
信濃の疏水とは?
本資料は、月刊誌「ながの農業と生活」(長野県農業改良協会発行)の巻頭写真に、平成20年1月号から掲載している「農の営みをささえる“信濃の疏水”」が、100回目の連載を迎えたことを機に、ライブラリとしてまとめたものです。
疏水とは
農業用水路など利水を目的に造られた水路の総称を疏水と呼んでおり、ここでは、農業用ため池も含めて紹介しています。
稲作文化の発展とともに地形や厳しい気象など様々な困難を克服すべく、挑み続けてきた先人たちの努力と英知の積み重ねによって現代まで大切に受け継がれています。
農産物の生産に必要な用水を供給することはもちろん、地域の文化や伝統とともに歩んできた歴史があり、故郷の景観を織りなし、生き物を育むなど、多様な役割と魅力を兼ね備えています。
疏水エリア一覧
農の営みを支える信濃の疎水をエリア別にご紹介します。
佐久地域、上小地域、諏訪地域、上伊那地域、飯伊地域、木曽地域、松本地域、大北地域、長野地域、北信地域の計10エリアについて、詳しくは下記リンクより御覧いただけます。
疏水コラム
– 発行にあたって
本誌は、月刊誌「ながの農業と生活」(長野県農業改良協会発行)の巻頭写真に掲載している「農の営みをささえる“信濃の疏水”」が2008年(平成20年)1月号の掲載開始から100 回目の連載を機に、この度1冊にまとめたものです。農業用水の歴史や水利構造物のことをより多くの人々に知ってもらいたいとの思いから、長野県の農業土木技術職員が、市町村や土地改良区の皆さんの協力を得ながら、写真や資料を集めて執筆されました。
9年間の長きにわたり、連載を続けてきたことに対し、執筆者に敬意を表すとともに同じ農業土木技術者として感慨深いものがあります。
歴史的に各時代の為政者は、我国の礎である農業を発展継続させるために、常に土地改良を行ってきました。古くは、堰の開削やため池の造成など、農業用水を確保して新田開発をしてきました。近代は、耕地整理やほ場整備、農業水利改良等を行って食糧増産に繋げるとともに、天水のみに頼っていた畑地にかんがい施設を造ることによって、高品質の野菜や果実の生産を可能とし、農業者の所得向上に繋げてきました。
こうした土地改良事業の積み重ねの結果が現在の社会資本ストックとなり、多面的機能を有する国民共通の財産となっています。現在、私達が目にする農業水利施設のほとんどは、各時代の更新改良によって開削当時のものから姿を変えてきていますが、当時と同じように農業者によって守られています。
現在、県内には約20,000 ㎞の農業用排水路があると言われています。その維持管理の多くは土地改良区や水利組合等が行っていますが、過疎化や高齢化に伴い保全管理が難しくなっていることから、組合員だけでなく地域全体で守って行こうということで、多面的機能支払事業など公的な支援も行われています。我々農業土木技術者は、地域の農業や農業水利施設の歴史と現状を学んでから計画設計していますが、用水の歴史や価値を後世に伝えるのも責務であると思っています。嬉しいことに、各地で小学生等を対象に、農業用水の歴史や価値を伝える活動が継続しています。また、かんがい施設の有する景観や歴史を観光資源として活用しようという動きもあります。
今回、各地域で疏水を維持管理している皆さんへ、改めてその歴史や価値を伝えることにより、更に愛着が湧き保全管理に前向きに取り組んで頂きたい、地域の財産として一緒に未来へ引き継いで行って頂きたいという期待を込めて、本誌を出版することにしました。