信濃の疏水
松本地域
美しい農村風景を次世代へ 梓川頭首工(あずさがわとうしゅこう)
長野県のほぼ中央に位置する松本平に田植えの季節が訪れると、広大な水田に青空と雪の残る北アルプス連峰が鮮やかに映し出される。農村風景の象徴ともいえるこの地域で、農業を支えてきた代表的な水利施設を紹介する。
松本平は、江戸時代以前から梓川など北アルプスを源とする複数の河川に農業用水を求めてきたが、年間を通じて流量の変動が大きく、夏場の雨量も少なかったことから旱魃の常襲地帯であった。ここ梓川でも、僅かな水をめぐり上流・下流・右岸・左岸が入り乱れ仲違いが繰り返されてきた。
古くから続いたこの宿命に終止符をうったのが、昭和に入って行われた県営と国営の農業水利改良事業である。特に、梓川両岸の14堰を1本に統合して取水する梓川頭首工や幹線水路の整備により、南は塩尻市から北は安曇野市穂高におよぶ農地に用水が安定供給され、飛躍的に農業の発展が図られたのである。これら施設も長い歳月を経て老朽化が進み、現在、国営中信平二期農業水利事業により改修が行われている。
松本平の農地に絶えることなく農業用水を送り続けてきた梓川頭首工と、そこに暮らす人々が命がけで築きあげてきたこの「美しい農村風景」が次世代に引き継がれ、これからも多くの人々の心を癒し続けるだろう。
2008年12月掲載
◦ 関係土地改良区
中信平土地改良区連合、長野県梓川土地改良区、東筑摩郡波田堰土地改良区、東筑摩郡黒川堰土地改良区、長野県中信平右岸土地改良区、
長野県中信平左岸土地改良区
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