信濃の疏水
佐久地域
妙なる流れで地域を支える 女堰(おんなせぎ)
浅間山麓の菱野の温泉付近に、「女堰」の水源があります。この周辺の山林は「舟が沢」と呼ばれ、浅間山に降った水が湧き出ており、古くから農業用水に活用されてきました。女堰の開設は、室町時代にまで遡ると言われ、その名称にまつわる民話が伝えられています。昔、「おつぼ」という女性が、水が湧くことを祈って四股を踏んだところ、大きな舟の形をした石の下から水が湧き出したので、この女性にちなんで名付けられたというお話です。
その後、舟が沢から西へ峰を越えた当時の菱野村、後平村、西原村(現小諸市地籍)などの集落で開田が進むにつれて水路が延伸されたことで、安定した農業が行えるようになりました。
各村への分水量や、水路の普請(工事)に出役する人手の数を定めた江戸時代の記録も残されており、地域全体で水路を大事に管理してきたことが伺えます。
昭和29年に小諸市高峯土地改良区が設立され、用水の安定的な供給と、大雨が降るたびに受けていた水害の解消を図るため、同年から7年をかけて上流区間5㎞の改修が行われました。しかしながら、終戦後の資材不足により完全な工事とはならず、昭和45年に起こった大干ばつの際には、極度の水不足になりました。このため、同年に2㎞をコンクリート水路に改修する工事を行い、その後は水不足や水害の心配がなくなりました。
山あいを流れる女堰によって創り出される美しい景観が、いつまでも受け継がれていくことが望まれています。
2018年8月掲載
• 施設の管理者 小諸市高峯土地改良区
佐久地域の他の疏水を見る
- 先人の偉業を称える 五郎兵衛用水(ごろべえようすい)
- 蓼科の清らかな伏流水を美田へ 塩沢堰(しおざわせぎ)
- 浅間山麓の新田を潤す 御影用水(みかげようすい)
- 地域に恵みを与える 女神湖(めがみこ)
- レタスを育てる千曲川源流の水 梓山畑地灌漑用水(あずさやまはたちかんがいようすい)
- 堰開削の思いを受け継ぐ 八丁地堰(はっちょうじせぎ)
- 白樺に囲まれた高原のため池 八千穂レイク(やちほれいく)
- 太陽の温もり 千ヶ滝湯川用水温水路(せんがたきゆかわようすいおんすいろ)
- 蓼科湧水の旅の終着点 みまき大池(みまきおおいけ)
- いにしえの慣わしを今に伝える 鷽ノ口円形分水(うそのくちえんけいぶんすい)
- 400 年の時を越えて 地域農業発展の恵み 四ケ用水(しかようすい)
- 日本一のレタスの生産地を支える 居倉大深山二次構幹線(いぐらおおみやまにじこうかんせん)
- ブランド米を育む 五郎兵衛用水(ごろべえようすい)
- 佐久平の農地を潤す 常木用水(つねぎようすい)
- 地域の発展を支える生命線 佐久平用水(さくだいらようすい)
- 妙なる流れで地域を支える 女堰(おんなせぎ)
- 日本一の高原野菜を潤す 海ノ口用水・広瀬用水(うみのくちようすい・ひろせようすい)
- ありがたきかな此の水 蓼科の水(たてしなのみず)