信濃の疏水
上小地域
人々の祈りを湛 える 塩田のため池(しおだのためいけ)
「岳の幟(のぼり)」は、上田市塩田平に古くから伝わる雨乞いのお祭りで、室町時代に端を発する。毎年7月15日頃、人々は未明に夫神岳に登り、日の出とともに山頂にある祠に祈祷を捧げ、竜の姿に見たてた布を青竹に括りつけて山を降りる。平成10年2月、長野冬季オリンピックの閉会式で披露され、色とりどりの布が表現する美しさを全世界に発信した。
塩田平は「塩田三万石」と言われる穀倉地帯であったが、雨が極端に少く、用水に対する人々の強い思いから、「岳の幟」の他、百八手など数多くの雨乞い伝説が生まれ語り継がれてきた。
農を営む先人達は、度重なる干ばつに苦しみ、条里制のできた平安時代の頃より多大な労力を費やして数多くのため池を築造してきた。最盛期には大小併せて、その数200とも300とも言われている。以来、脈々と受け継がれてきた農業用ため池、そして肥沃な大地。
春から秋にかけて、大地を潤してきたため池にとって、冬は暫しの休息の時間。時が止まったかとも思えるような静寂の中、来るべき春のために、新たに水を湛え、生命を育む。
そして、その風景の中には、先人達の培ってきた歴史と伝統が息づいている。
2008年2月掲載
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