信濃の疏水
松本地域
山に向かって流れる 矢原堰(やばらせぎ)
安曇野をほぼ等高線に沿って緩やかに流れる水路を、この地方では横堰と呼んでいます。横堰は自然の摂理に逆らってあたかも山に向かって流れているように見えますが、矢原堰はこの横堰の先駆けとなった水路です。
犀川に水口を求め、穂高神社先の欠ノ川まで、総延長8300m、450haの水田を潤しています。
今からおよそ360年前、矢原村(現在の安曇野市穂高矢原)の庄屋臼井弥三郎は、度重なる失敗にもめげず松本藩に許可願いを出し続け、不屈の精神をもってついに開削・通水を成し遂げました。
命懸けの偉業は、昭和11年に取水口近くに建てられた頌徳碑に詳しく記されています。この矢原堰の成功は、後の新田堰、勘左衛門堰、拾ヶ堰といった横堰に引き継がれ、不毛の荒れ野は名だたる米どころとなったのです。
現在ある矢原堰は、昭和43年から約10年の歳月と4億円を投じて建設されたものですが、老朽化とともに都市化に伴う排水量の増加が問題となっていました。そこで下流の3200mについて、平成21、22年の2ヵ年で県営かんがい排水事業により、※水路表面に高強度モルタルを吹き付ける工法で改修することになりました。
市街地を流れる水路として、遊歩道も整備されつつあり、市民の憩いにも一役買っています。
2010年2月掲載
※ 水路補修工法の一種。繊維等を混ぜて強度を増したモルタルを水路表面に薄く吹き付け、コンクリートの長寿命化と流下能力のアップを図る。既設水路を取り壊さず産業廃棄物がほとんど出ない。
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