信濃の疏水
上小地域
寡雨地帯の農業を支える 舌喰池(したくいいけ)
長野県上田市千曲川左岸に位置する「塩田平」は信州の鎌倉と呼ばれ、江戸時代には塩田三万石を誇る穀倉地帯であったが、この地域はもともと典型的な内陸型気候で、年間降水量が約900㎜程度と少なかったため、先人達は知恵を絞り数多くのため池を築造して、水田農業に必要な水を確保してきた。
その一つである『舌喰池』は塩田平の西端に位置し、塩田の霊峰独鈷山(とっこさん)より流れる産川から引水している総貯水量13万8000tのため池で、築造年は不明だが改修歴から江戸時代前期には存在していたようである。この池には、その名前の由来ともなった※云い伝えがある。幾度となく水不足に悩まされながらも、穀倉地帯に不可欠な水を確保し続けてきた先人たちの苦労が偲ばれる。
緩やかな北向き傾斜地の高段にある舌喰池から見る塩田平の眺望は美しく、また南正面に聳え立つ独鈷山の佇まいも印象的であり、地域交流の場としても多面的機能を発揮する舌喰池は、これからも地域の貴重な財産として愛され続けることだろう。
2009年4月掲載
◦管理者 手塚自治会
※『舌喰い池の民話』
昔、この池が造られた頃、土手から水が漏れて十分に水を溜めることができず、土手に生きた人を埋めて祈る人柱(ひとばしら)を入れなければ水が溜まらないという話になり、くじ引きで村はずれに住む美しい娘が人柱に選ばれた。娘は人柱になる前の晩、身の不幸を嘆いて舌を噛んで池に身を投げた。村人たちはこの悲劇があってから、「舌喰池」と呼ぶようになった。
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