信濃の疏水
松本地域
緑にかこまれた歴史を刻む 美鈴湖(みすずこ)
美鈴湖は松本市の東部、旧本郷村にある農業用ため池で、市街地に近い浅間温泉から美ヶ原の方へ3・5㎞程登ったところにあります。
堤の高さは19m、貯水量81万㎥を湛え、湖からの流れは女鳥羽川へと注ぎ、下流の水田約250haを潤しています。元々は「芦の田池」といい、「美鈴湖」と改称されたのは昭和28年のことです。
歴史は古く、最初の築堤は安土桃山時代後期にまで遡ります。かつて女鳥羽川の源流は樹木が生い茂り水も豊富でしたが、薪や家屋材の確保のため水源林が減少してしまいました。旱魃が続けば水田に被害が生じる事態に至り、ため池が造られることとなりました。
時に慶長2年(1597年)のことで、本郷・岡田両地区の協力と松本城主の督励という力の入れようでしたが、完成は11年後、すでに江戸時代となっていました。その後も、地元農民の多くの負担により、堤の増築や改修等がたびたび行われました。
昭和になり食料増産の一環として、増築の構想が持ち上がりました。県営事業として昭和18 年に着工となったものの、戦時中の人手不足などもあり工事は終戦後まで続き、関係者の多大な努力をもって昭和26年(1951年)ようやく完成しました。約4haだった湖の面積が10haとなり、より多くの水田を潤すことができるようになりました。
歴史ある美鈴湖は、美ヶ原高原への玄関口でもあり、現在ではヘラブナ釣りが楽しめるほか、遊歩道やキャンプ場等も整備され、人々の憩いの場所としても新たな歴史を刻んでいます。
2011年10月掲載
◦管理者 松本市女鳥羽川土地改良区
美鈴湖 冬
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