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信濃の疏水

松本地域

水田をうるおす命の水 小田多井堰(おだたいせぎ)

安曇野の中央部に位置する小田多井地区は、雄大な北アルプスを背景に豊かな田園風景が広がり、点在する道祖神や四季折々の景観など安曇野の魅力あふれる地域です。

この地域の水田を潤す小田多井堰の歴史は、江戸時代初期の新田開発にさかのぼります。当時は梓川から取水している温堰の末流の御手洗堰を延長し用水としていましたが、「古田優先」の水利慣行では、新しく開田された流末の小田多井村に水が回ってくるのは決まって夜中でした。徹夜して自分の田んぼに水を入れなければならないなど、村人は大変な苦労をして耕作していました。

こうしたことから村は、堰の取り入れ口を4㎞上流に移し、温堰の本流から直接取水する新しい堰(小田多井堰)の開削願を松本藩に提出し、上流の村々の説得や藩への訴えを粘り強く行い、5年後の1678年に年貢増徴を条件にようやく開削の許可を得ることができました。

小田多井堰の開削工事は1日当たり140人を動員し、わずか3日間で完成させました。これにより安定した用水を利用できるようになり、村の新田面積や石高が増加しました。

現在の安曇野の風景は、こうした先人達の労苦の賜物であるということで、昨年、小田多井水利管理委員会は、地域の繁栄の礎となった堰の歴史を小冊子にまとめ、子供達へ受け継いでもらうよう区内全戸に配布しています。
2012年6月掲載

◦参考文献 小田多井堰の歴史(小田多井水利管理委員会)