信濃の疏水
松本地域
みんなの大切な水の道 波田堰(はたせぎ)
波田堰は、松本市波田を流れる幹線延長約10㎞の農業用水路です。日本アルプスの名峰、槍ヶ岳に源を発する梓川の水を梓川頭首工で取水し、梓川の扇状地に拡がる水田約280haを潤しています。
この地域は、江戸時代から用水の確保に苦しみ、アワやヒエを中心とした雑穀等の畑作が中心でしたが、明治2年に波多村(現・松本市波田)の庄屋であった波多腰六左が新堰の開削を計画し、下流域の村との調整に苦心をしながら、5年の歳月をかけて堰を完成させました。これにより、明治15年には約200haが開田され、更に、昭和初期の波田堰改修工事や昭和43年に着工した県営ほ場整備事業により基盤の整備が進められたことで水田の面積が増加し、約280haの豊かな田園地帯が広がるとともに、近年は特産のすいか栽培も盛んに行われるようになりました。
現在では、施設管理者である「波田堰土地改良区」や農地・水保全管理支払交付金の活動組織である「波田堰の水辺を活かそう会」等が主体になり、散策路や四阿の整備とともに、堰の歴史や役割を広くPRするイベントを開催するなど、地域に愛される水利施設としての整備が進められています。また、用水路の流れを活かした小水力発電施設の設置など、農業用水路の新たな活用の取り組みも始まっています。
2013年10月掲載
◦施設の管理者 東筑摩郡波田堰土地改良区
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