信濃の疏水
松本地域
開削200年を迎える 拾ヶ堰(じっかせぎ)
文化13年(1816年)の開削以来、今年で200周年を迎える安曇野の「拾ケ堰」は、「疏水百選」にも認定された美しい農業用水路で、約900haの農地を潤しています。
安曇野の開発は平安時代から行われていましたが、典型的な扇状地であるため、扇せん央おう部は、地下水位が低く、水田はわずかで原野が広がっていました。
この広大な未墾の地に悲願である新田開発を行うため、江戸時代後期、村長たちが一致団結して堰開削を計画し、幾多の苦難を乗り越えながら15㎞もの堰をわずか三ヵ月余りの短期間で完成させました。
「拾ケ堰」の開削以後、荒地は豊かな美田に変わり、食料の生産性は大きく向上し、農民の暮らしも豊かになりました。こうした地域の発展の陰には、度重なる自然災害に立ち向かい、命を賭して用水を守り・活かし・伝えてきた農民の努力があったことも忘れてはなりません。
現在、「拾ケ堰」は国営・県営の改修事業によって近代的な姿となりましたが、今日も変わらず、安定的に用水を供給し、安曇野の美しい田園風景には欠かせないものとなっています。
今後さらに、地域の歴史を伝える教育資源として、また、訪れる人々に安らぎを与える観光資源として、その重要度が増していくことが期待される「拾ケ堰」。末永く愛され、地域の宝であり続けることを願います。
2016年5月掲載
◦施設の管理者 長野県拾ケ堰土地改良区
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