信濃の疏水
大北地域
北アルプス山麓の穀倉地帯を潤す 町川(まちかわ)
北安曇郡池田町の東山の高台に登ると、眼下に雄大な北アルプス山麓に抱かれた肥沃な穀倉地帯が広がる。その中央には北アルプスから流れ出る高瀬川が、北から南へ銀色の帯のように輝き、その東側に広がる約1,000haの水田地帯を潤すのが「町川」である。
かつて、この地域は高瀬川によって作られた氾濫原であった。未墾原野からの新田開発が、往古から先人の努力と多大な労費の投入による町川の開削によってなされ、毎年春の川掘り、水路の工事が何百年も前から続けられてきた。
町川は、昔は大町市社地籍の高瀬川から取り入れ導水していたが、昭和初期に昭和電工自家発電の計画に伴い、生坂村広津発電所への送水路から、安定した導水が可能となった。
近年では、昭和30年代半ばから約10年の歳月をかけて、池田町土地改良区による大改修工事が行われ、近代的な水路に生まれ変わった。その後、早い流れにより水路が洗掘され、倒壊の危険や漏水が著しい区間が生じ、平成14年度から県営事業により更新整備を行っている。
秋の訪れとともに稲刈りの季節がやってくる。今後は、限られた水資源の有効活用を図っていくためにも、地域の叡智が結集され、小水力発電の取組や適切な維持管理を行うことの重要性が益々高まっていく。
2008年9月掲載
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