信濃の疏水
諏訪地域
セルリー畑に恵みの水 御射山・深山の自噴井戸(みさやま・みやまのじふんいど)
本年、7年に一度の諏訪大社御柱祭で盛り上がった諏訪の八ヶ岳西麓に位置する原村はセルリーの生産が盛んで、夏場の出荷量は日本一です。
この地域は、昔から神野と呼ばれ、荒れ果てた場所でした。江戸時代初期に初めて開墾が行われましたが、土地の形状は不整形で石礫が多く、道水路は狭小で蛇行しており、農業の近代化の支障となっていました。さらに、この一帯は水に恵まれず、開墾した畑は水不足が深刻でした。
そこで、この地域に昭和59年度から県営畑地帯総合土地改良事業御射山地区、平成6年度から県営担い手育成基盤整備事業深山地区に取り組み、区画整理と道路・用排水路が整備され、農業基盤の確立と農業用水の安定供給が図られました。
この事業では、深井戸とファームポンドを設置し、そこから畑地かんがい施設が整備されました。深井戸は5箇所あり、地下200m付近まで掘ったところ地下水が自噴しました。
そのおかげで、水を汲み上げるためにポンプがいらず電気代が安くなったことは予想外の幸運な出来事でした。かんがい施設の整備により各畑での散水が可能となり、大量の水を必要とするセルリーはじめ高原野菜の生産が大きく発展しました。
この時期、セルリー畑の散水用パイプから噴水のように降りそそぐ水は、遠くからは水のカーテンのようにも見え、原村の夏の風物詩となっています。
2010年7月掲載
◦ 深井戸 一般的には深さ30m以上の井戸
◦ ファームポンド 畑地かんがい用の貯水池。水量が一定になるようにポンプにより給水される貯水池
◦ 自噴 深層の地下水は水量が多く水圧がかかっている場合、地表まで噴出することがある。