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信濃の疏水

諏訪地域

四季を映す水面 御射鹿池(みしゃかいけ)

茅野市東部、北八ヶ岳山麓の豊かな緑の中に静かに佇む御射鹿池は、日本画家の巨匠・東山魁夷画伯が「緑響く」を描く際にイメージを得た地とされ、木々の緑が映りこむコバルトブルーの水面が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
御射鹿池は笹原地域の水田32haを潤す農業用ため池であり、渋川から引いた2万6000tの潅漑用水を湛えています。ため池築造以前は渋川から直接水を引いていましたが、標高1,100mを超す笹原ではしばしば冷害に見舞われ「3年に1度米が穫れれば良い」と言われるほどでした。また、奥蓼科温泉郷の数々の源泉を抱える渋川が強酸性水であることも稲の生育を妨げていました。昭和8年にこの池が築造され、湧水と合わせて水を希釈し温めることで収量が飛躍的に向上しました。
その名の由来は、この地域が神野と呼ばれる神の御狩場であり、諏訪大社上社の後頭祭で神に捧げる牝鹿を射る「御射山御狩神事」があったことによると伝えられています。
また、八ヶ岳中信高原国定公園の特別地域に属し、渡り鳥やアオイトトンボなどが見られ、強酸性水の湖底にはチャツボミゴケが繁茂し、湖面に木々を映し出す鏡効果をもたらしています。このような豊かな生態系や美しい景観を維持するため、堤体を改修する際には在来植生を移植するなどの取り組みがなされてきました。
平成22年3月、景観や活動が評価され農林水産省の「ため池百選」に選定されました。
四季を通じて色鮮やかな色彩を映しだす御射鹿池を後世に伝えていきたいですね。
2011年8月掲載