信濃の疏水
上伊那地域
美しい桜が水辺を彩る 荒神山ため池(こうじんやまためいけ)
中央自動車道辰野パーキングの南西に見える小高い山が荒神山です。ホタルで有名な辰野町のほぼ中央に位置するこの小さな山の山頂近くに「荒神山ため池」があります。
荒神山ため池は、沢底川が天竜川へ合流する直前で取水し、約600mの距離をポンプアップして水を貯めています。水を温めて配水する温水ため池として、昭和44年に完成しました。貯水量は3万t、面積は2万7000㎡、下流に広がる33haの水田を潅漑しています。
地元では「たつの海」と呼ばれ、約700mある池の周囲では、ウォーキングや散策を楽しむことができます。春には、およそ150匹の鯉のぼりが泳ぎ、ソメイヨシノや山桜など約800本の桜が次々と見頃を迎える中、「荒神山公園さくら祭り」が開催され、毎年多くの花見客で賑わいます。
ため池を中心とした荒神山公園には、温泉宿泊施設や日帰り入浴施設、球場やテニスコートなどのスポーツ・レクリエーション施設、美術館、昆虫博物館などの文化施設もあり、緑がとりまく広い公園内ではいろいろな楽しみ方ができます。
多くの人に親しまれている荒神山ため池ですが、ため池周辺は、適切な維持管理がなされ、美しい景観が保全されていることなどが評価され、平成22年3月に農林水産省の「ため池百選」に選定されました。
公園の一部としてとけ込んでいる荒神山ため池ですが、ため池百選の選定は、農業用ため池の重要性を再認識する契機となったのではないでしょうか。
2011年5月掲載
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