信濃の疏水
上伊那地域
先人に感謝。地域資源を活かす 西天竜幹線用水路(にしてんりゅうかんせんすいろ)
西天竜用水は、天竜川西側の河岸段丘上段部の、辰野町から箕輪町、南箕輪村、伊那市にかけて広がる水田地帯を潤す農業水利施設です。この地域は、もとは林地が大半を占めていましたが、大正8年に西天竜耕地整理組合が設立され、他の地域に先駆けて総延長26㎞の用水路と、1300haの田畑を拓く大規模な耕地整理事業が、昭和14年までに行われました。地域一帯は穀倉地帯へと変革し、戦中戦後の食糧難の時代をも乗り越えることができました。
その後、昭和30年代頃になると水路の老朽化が顕著になり、全線にわたる徹底的な改修が必要であることが判明しました。しかしこのとき、短期間で改修を行うための有利な事業制度がなく、対応に苦慮する事態となりました。
このため、非かんがい期に本用水路を利用する発電事業と、水路改修事業を一体の事業として実施することを目指し、土地改良区役員が、県、国へ働きかけを重ねました。その結果、昭和34年12月に、県営事業として発電の事業化が決定し、水路の改修工事と共に発電所の建設が始まり、2年後には通水、発電が開始されました。両事業が費用を負担し合うことによって、短期間での水路改修が可能となり、土地改良区の負担が軽減されました。
先の耕地整理事業の着工から30年経った昭和25年に建てられた高さ8mの大きな記念碑には、事業の経緯とともに、「事業が成し遂げられても、それを守っていくことは難しい
ものである。水をたゆまず流し続けることは後生の人の責任であり、恩恵を受けるのもまた後生の人である。後生の人は、力を尽くして励み、努力しないわけにはいきません。」という内容の、先人に対する感謝と決意の言葉が刻まれています。まさに、この大規模改修事業は、碑文の決意を引き継いだ土地改良区役員・組合員により成し遂げられたものであり、現在も水利調達のための努力が続けられています。
2017年9月掲載
•施設の管理者 上伊那郡西天竜土地改良区
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