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信濃の疏水

飯伊地域

いにしえよりの流れ 伊賀良井(いがらい)

飯田市の天竜川右岸に広がる河岸段丘に、地域の重要な水源となっている伊賀良井と呼ばれる用水路があります。中央アルプスに端を発する一級河川松川から切石の須志角地籍で取水され、天竜川に落ちるまで約9㎞の延長を持ち、500ha余の受益地をいくつもの支線水路により潤してきました。起源は古く、室町時代にはあったとも言われています。
貴重な水ゆえに水争いも繰り返されてきました。用水路の管理のための組織は、飯田藩時代には確立されており、様々な裁定が行われています。地元に密着した井守と呼ばれる責任者の役名は、今も引き継がれ、現在は、北十区財産区が伊賀良井の管理を行っています。これは所有する山から得た木材や、その収入により用水路の維持管理をするために、先人が工夫してとった組織の形態です。
農業経営の多様化により、水稲だけでなく、野菜、果樹等の栽培が行われるようになり、水の需要は変化してきていますが、施設の老朽化により漏水がみられ、用水が不足している状況にありました。また、高速道路の開通などにより急速に周辺の都市化が進み、かつての恵みの用水路は、多くの排水を集め、災害の原因になってしまう状況へと変化してきました。
こうした中、平成14年より平成20年にかけて、県営かんがい排水事業により、取水部である頭首工及び用水路の上流約1・2㎞の改修が行われました。この区間は、魚巣ブロックや玉石積み、化粧型枠による空石積の補強など、生態系と景観に配慮した構造とし、市民に親しまれる水空間としての用水路を目指して整備されました。
2009年7月掲載