信濃の疏水
大北地域
北アルプスの麓 清らかな水が流れる 横溝堰(よこみぞせぎ)
横溝堰は、北アルプス山麓から流れ出た乳川本流から分岐して開かれた水路です。江戸時代初頭の1650年ごろ(慶安年間)開削され、以来、大町市常盤西山地区に用水を供給し、今では14haの農地を潤しています。
堰は、延長1.6㎞に及び、自然の地形を利用して川の〝みおすじ(澪筋)〟が築かれた素掘りの水路です。昭和36年には、洪水のたびに流され、受益者を悩ませていた取水口が改良され、その後に沈砂池も造られました。これにより用水の流れが安定し、地域農業の発展に大きく貢献してきました。
現在は、木々の間を穏やかに流れており、岩の上には草が生い茂り、石は見事な苔に覆われています。
川底だけは、石の表面が赤みを帯びています。これは、用水にわずかに含まれている鉄分が歳月を経て石に付着し、さらに、上流の沈砂池により、砂が流されず、岩の表面が洗われないことでできあがったものです。この堰の長い歴史を物語るとともに、周辺の木々と相まって美しい景観を形成しています。
北アルプスからの清らかな水が流れる横溝堰は、国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)の渓流ピクニック広場の森の中を自然の川のように流れ、ここを訪れる多くの人々に親しまれています。
2015年6月掲載
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