信濃の疏水
長野地域
豊富な水量で地域農業を育む 上中堰(じょうちゅうせぎ)
長野市南部一帯に広がる川中島平は、武田信玄と上杉謙信が戦った「川中島の戦い」で有名ですが、水稲のほか、リンゴ、桃などの果樹の生産が盛んな農業地帯として知られています。
犀川が長野盆地に入り込む「犀口」と呼ばれる地域から取水し、川中島平の農地を潤す三堰は、上流から上堰、中堰、下堰と呼ばれています。この堰は、江戸時代初期に松代藩城代の花井吉成父子が開削したものと伝承されています。
扇状地の農業といえば一般に畑作中心であった中、この地域の農業は水田率が極めて高く、また、三堰の豊富な水量と卓越した農業技術を活かした麦米の二毛作率でも、かつては県内随一を誇っていました。
豊富な水量の恩恵がある一方、犀川は急流で河底の浸食が激しく、氾濫や河床低下により昔から用水の確保に苦心し、取水口は上流へと幾度も付け替えられました。このような農業者の労苦の歴史を経て、明治4年に上堰と中堰を※合口し、これが現在の上中堰の始まりとなります。
その後、昭和32年東京電力小田切ダム建設に伴い、ダム湖右岸から取水する方式となり、現在に至っています。
この地で誕生し、その名を冠した川中島白桃は、篠ノ井・川中島地域で育てられ全国的なブランドとなっています。長野県「おいしい信州ふーど(風土)」のオリジナル品目としても紹介され、消費者から高い評価を得ています。
2014年9月掲載
◦施設の管理者 上中堰土地改良区
※合口 複数の取水口を1ヵ所にまとめ、新しい水利系統に統合する手法
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