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信濃の疏水

長野地域

古より文化人の愛した日本の原風景 姨捨の棚田(おばすてのたなだ)

姨捨の棚田は、三峰山の山麓斜面に広がる約40ha、1500枚の水田で、日本有数の美しい棚田として知られています。平成11年には「姨捨(田毎の月)」として国の名勝に、また、農林水産省「日本の棚田百選」に選定され、平成22年には国の「重要文化的景観」にも選定されました。
善光寺平を眼下に望む斜面に、土の畔が屈曲した小さな田が幾重にも連なり、美しい景観を形成しています。
この美しい眺めは、平安時代の昔から、姨捨山と月の伝説の地として、また江戸時代になると「田毎の月」(一枚一枚の田に月を映す情景)の名勝地として、文学・芸術を愛する人々の間で、あまねく知られてきました。 松尾芭蕉は「更科紀行」で姨捨を訪れ、
    おもかげや 姥ひとりなく 月の友
と詠んでいます。
また、安藤広重は「六十余州名所図会」の中で、鏡台山から昇る満月を背景に、姨石と長楽寺門前の「田毎の月」を描いています。
この棚田を潤す水は、背後の三峰山周辺に降った雨や雪解け水が地下に浸透し、長い時間をかけて中腹の弁財天周辺にこんこんと湧き出したもので、この清水を大池(上池、中池、下池の総称)とその下流にある八幡林池に溜め、更級川を経由して棚田に導かれています。「重要文化的景観」には、棚田の景観美を形成する重要な要素として、水を供給する水利
施設も含まれています。
現在、姨捨の棚田では地元農家のほかに、「田毎の月棚田保存同好会」、「四十八枚田保存会」、「姨捨棚田名月会」、「科野農業塾」、「姨捨棚田会」、「名勝姨捨棚田倶楽部」や、棚田オーナーの皆さんが耕作を行っており、今なお美しい日本の原風景は守られています。
2018年11月掲載

•参考図書 千曲市教育委員会編  「姨捨の棚田ガイドブック」
千曲市姨捨棚田農都共生協議会編 「信州さらしな姨捨の棚田ガイド」