信濃の疏水
佐久地域
蓼科の清らかな伏流水を美田へ 塩沢堰(しおざわせぎ)
女の神山と呼ばれ、日本百名山としても知られる蓼科山。ここから立科町塩沢の台地まで、延々と用水を送り届ける堰がある。そこには、蓼科の水を里まで引水した偉業と、堰の保全管理や用水の確保に尽くしてきた先人たちの苦難の歴史があった。
塩沢堰(本堰・和見堰)は、江戸時代初期に初代六川長三郎勝家が蓼科山の裾野に本堰の源泉である弁天神湧水と、新堰(和見堰)の源泉である水出湧水を探し当て、寛永18年(一六四一年)から6年の歳月を費やして正保3年(一六四六年)に延長約55㎞の塩沢堰が完成した。これにより、未開の台地が美田へと変わりながら次々に集落が形成された。
その後、六川家と地域住民の努力により保全管理されてきた堰は、用水量確保と近代農業に対応するため、昭和30年代後半から県営事業等により、堰を統合した幹線水路やかん水施設が整備された。現在は、良い水、良い土に恵まれ、高い品質を誇る「たてしな米」やリンゴの栽培が盛んに行われている。
また、土型や石組みを多く残し清らかな水が流れるこの堰は、親水公園や水道水などの地域用水としても広く活用されているほか、この疏水によって貯えられた女神湖には美しい自然を求めて年間200万人の観光客が訪れ、地域繁栄の礎となっている。
2009年3月掲載
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